2011年02月21日

『豊田道倫 映像集3』-MOOSIC LAB Version-◉カンパニー松尾監督インタビュー

052.jpg

2011年2月26日(土)池袋シネマ・ロサにて、21:00〜一夜限りのレイトショーが行われる『豊田道倫 映像集3』-moosic LAB Version-。これは2005年から2010年までの、ミュージシャン豊田道倫のライブを収めた作品である。が、ただライブ映像を並べただけの音楽ドキュメンタリーとは様相を異なる。豊田の35歳から40歳までの人生に起こった出来事が、まるで物語ように目まぐるしく変化し、複雑な表情を生きる男の言葉がむき出しで投げ出されている。

僕は、この作品をパソコンの小さなモニターで見ながら、なんで豊田さんはこんなになっても歌うことを止めないのか。と思った。いつか豊田さんはライブのMCで「内臓を取り出して、その血で絵を書くように歌を作ってます」と言っていた。映像集3には、その内臓が映りすぎている。歌と言葉をつなぐ回路に、ごろごろと尖った刺が突き刺さっている。メロディはその中を血液のように流れていく。

<おまえの血液はどんな色/きっとどす黒く濁ってかたまってる>(「無題」豊田道倫)

ステージでギターをかついで、一つ一つの言葉を丹念に抽出していく豊田さんのライブは、どこか遠い国の映画のように、誰も知らない人の生活をぽっと写し取る。あざやかな光と、鈍い表情で生きる人間の姿が見える。映像集3は、松尾さんのカメラがさらに豊田さんの歌の世界を凝縮して見せる。62分。足下の雑多な心情から、どこまでも突き抜けていくロックの力を感じさせる作品だった。

映像集3はDVD化未定、今後も上映の予定はない。シネマロサの大スクリーンで、一夜だけの上映。

監督のカンパニー松尾さんは以前「AVと、家族と、豊田道倫しか撮っていない」と語っていた。15年に渡るライフワークの最新作。順風満帆とはいかない豊田道倫の生き様と、それでも歌い続ける背中に、ロックとは何か。という大きな命題があぶり出されているような気がした。編集を終えたばかりの松尾監督に話を聞いた。

ー今回、上映に至る経緯はどういった流れだったのでしょうか?

「元を辿ると、2006年から2010年までの豊田くんの映像集をDVDで発売しなきゃいけなかったんですよ。5年区切りで出してたんですね、2000年に映像集1、2005年に映像集2。それで3が2010年のはずが、ぼくの本業のAVが忙しかったのと、家庭的な都合があって、出せなかった。そこで豊田くんから、年末に新宿のシアターpooの4daysライブの時に、「じゃあ上映版だけ軽く作ってもらえませんか?」って言われて、まず一発作ったのが新宿上映版。
これはpooなんで20人とか30人しか見てないんですね。豊田くんにも見せないままその場で上映して。俺も突貫工事で一週間くらいでやっちゃって、そこで見てもらったのがわりかし周りの人たちから好評だったんですよ。そこで誰か映画の関係者でもいたのかな。「松江(哲明監督)くんが前野(健太)さんの『DV』っていうのを出すんですよ」って言うんで、俺は冗談で「じゃあうちは『AV』で」って言ったことを誰かがtwitterで書いて、それを直井さんが聞きつけて、「見せてくれませんか」っていうんで新宿上映版を送ったのね。そしたら「いいですね」ってなって、「今度二月にイベントやるんで是非」ってのが今回の話。
それに合わせて、ちょこちょこっと編集して、新宿版からMOOSIC LAB Versionになったと。一つポイントだったのは、後々のDVD化ってことを若干予想しながら編集を変えていった。だから映像集の作りに近いかな。新宿上映版はあまり説明もせずにライブをポンポン見せちゃってるだけなので、今回は一年一年をちゃんと区切った上で、テロップで、アルバムが出たとか、結婚したとか、離婚したとか、説明が入っちゃった。だからわかりやすくなったのが今回のバージョンです」

ー一週間で、突貫工事で作ったということにびっくりしました。5年の素材を62分にまとめるってすごい時間を要したと思いました。

「そりゃ時間をかければかけるほど、一ヶ月かければそれだけのものが出来るかもしれないけど、案外、今回の5年間ってのは豊田くんの中で単純に、僕がどうのこうのというより、豊田道倫の5年間がもう起承転結みたいなところまでいっちゃってるので、それが歌に出てきているので悩み所がないというか。上映版なんで短く出来ればと思ってたから、DVD版にすれば4〜5時間にはなる素材だと思ってたから。DVD版はもうちょっと色んな要素が入ってきて、もっと豊田くんの本来持ってるポップな部分も入ってくると思ってたんだけど、今回そういうのは入れられないんですよ。だから逆に言えば見やすいし、伝わりやすいんですけど。アーティスト豊田くんの部分よりも、ドキュメント部分に焦点が当たっちゃってるからね。曲の選び方が」

ーその5年間で松尾さんが、例えば家族の映像であったり、奥さんの映像であったり、歌の心情とぴったりの撮影をしていることに驚いたんですが

「それはたまたまつじつまが合っちゃってるんだよ」

006.jpg

ー結婚式での「ギター」が映像集3には入ってないじゃないですか。これは当時録音したものをCD-Rで販売していて、後々にはアルバムのタイトルにもなる曲で、豊田さんにとって象徴的な曲かなと思ってたんです

「ぼくはあんまり豊田くんのアルバムは聴き込んでなかったですよ。自分の撮ったライブ映像からでしか情報をピックアップしてないんで、いつもその辺は豊田くんが任せてくれるから、豊田くんのアーティスト的な世界ではないでしょうね。だから、例えば曲が良くても、ぼくが撮ったライブ映像がいいものか悪いものかっていうのが非常に大きな問題で、優先しているのはぼくが撮らせてもらったライブ。
しかも全部のライブに行ってるわけじゃないから、特にこの5年間はAVが忙しくて全部行けてないんですよ。特に2008年をレコーディングのテロップで済ませちゃってるのはぼくが撮れてないからですよ。アーティストの面の豊田くんの音楽的な神髄は映像の素材には入っていないんですよ。だからぼくが撮れてたものの、OK映像から拾っちゃってるから、その辺の選曲は偏っちゃってるかな」

022.jpg

ーそれでも、ストーリーがしっかりしているというか、凝縮した豊田さんの人生を見たような気がしました。岐阜リオワールドでのショッピングモールでのライブ映像も衝撃的ですが、新幹線の中でのインタビューはあらかじめ意図して撮ったものでしょうか?

「インタビューは5年に一回やるんだけど、適当なところで、そろそろ豊田くんの喋りがあるといいかなってタイミングで」

ー豊田さんから、松尾さんとほとんど飲みに行ったことがないって聞いていました

「ないね」

ー松尾さんと豊田さんの関係で、こういう映像は使ってほしくないとか、そういった緊張感はないんでしょうか

「それはお互いが任せてる部分があるから、こういう関係になってるんじゃないかな。こんなの恥ずかしくて言わないけど、豊田くんが任せてくれてるってことは、僕が信頼されてるってことだと思ってる。実際に言葉を交わすわけではなくて、僕があなたを撮っているのはこういうことなんだよって、それが映像としてちゃんと出ているかどうか。僕が今までそういう話もせずに15年も撮ってさ、豊田くんが今でも撮らせてくれてるってことは、豊田くんが自分では撮れないものを僕がちゃんと補足する形で撮れてるって関係性があるから撮らせてもらってる。そんなこといちいち話すことでもないし、確認することでもないけどね。
だけど、僕がいない時はまた豊田くんも違うだろうし、全部を撮ろうとは僕もあまり思わないし、お互いのベストのタイミングのところだけあれば。いつも撮影者に対してのスタンスだけど、その時、僕が撮っている時にありのままを撮れるかって準備はしてるし、やっぱり撮影者が被写体にどういう思いを持っているかってことが、映っちゃうと思うし、それがないと意味ないしね。」

ー5年に一回のインタビューでしか、じっくり話をしないんですか?

「そうですね。だって俺が本当にやりたいのは、今回ドキュメンタリーっぽくなっちゃってるのは、豊田くんがそうなっちゃってるからで、俺の本意ではないからね。映像集2が一番の本意だから」

ー色々な世界が散っている感じですか?

「そう。それが歌の世界じゃないですか。今回はドキュメントっぽく見えるのは単純に豊田くんに色々あるからよ(笑)」

ー映画「レスラー」(監督:ダーレン・アロノフスキー)みたいだと思いました

「そうなっちゃってるね。実際そうだろうし。だから今回の要素が大きいのは豊田くんがアーティストというより人間として色々あった。そこが豊田くんに色々な曲がある中で、色濃く反映した部分をピックアップしたからさらにそうなっちゃった。例えば結婚、離婚というのがあったとしても、そうではない楽曲はいっぱいあるんだよ、本当は。けどそのセレクトで見え方が違っちゃうけど、ぼくがたまたま撮れてたってのはそっちの歌だったんだよね」

ー映像のOKもその方が多かったんですよね

「ぼくは撮影のOKが出ていなければ、その曲は使わないから。曲が良くても、ぼくの録り方と演奏が良くないと使えないから。コンセプトは映像集だから。これが豊田くんの5年間のCDのベストではない、楽曲のベストではないから。映像集だから、そこに起きた、豊田くんに撮らせてもらった映像のベストだから。そこはやっぱり違うよね。画本意だから。それにプラスたまたま歌の内容がどうにもこうにも、豊田くんは素直っていうか、リアルっていうか(笑)」

ー昆虫キッズとのライブの映像が、今回のハイライトかなと思いました。今まで久下(惠生)さんとかbunさんのギターとの、不思議な世界があったんですけど、昆虫キッズとのライブは直球じゃないですか。あれが今回のハイライトになるっていうのが、嬉しかったです。若い目線で見れるというか。渋い豊田ファンも見れるし、若いロックファンも見れるっていうのが

「昆虫の場合は、そもそも豊田くんのライブとは質が違うというか、盛り上がるライブは豊田くん自身そんなにやらないだろうし。あのアルバム(『ABCD』)を通じて昆虫キッズと培った何かしらのパワーがね。それに昆虫キッズのファンがちゃんと暴れてくれるっていうか、それもデカいと思う。確かにあれは豊田くんの中でも一つのハイライトになったんじゃないかな。けど豊田くんにあれがハマってるかというと、あくまですっぽりハマってるわけではなくて、豊田くんも照れがあったり、戸惑いがあったり、ダイブするのにうまく飛べないとかね(笑)、普段飛んでないからね。そういうのを踏まえて、豊田くんと昆虫が合体したいい機会だったんじゃないかな。あれが上手に飛べてると逆になんかあれかなって」

ー最後の久下さんとの曲もしびれました

「しびれたね。回してる時からしびれてた」

ーあれもそんなに特別なライブじゃないというか、コンスタントに行っているライブの一つというか

「そう、普通にあっさりはじまったもんね」

ー色々なことを経て、最後のあのライブっていうのは松尾さんはどう感じたんでしょうか

「あれはたまたま本当にいい演奏が撮れちゃったっていうのを最後に持ってくるっていうのはストレートに、構成編集の最後には王道じゃないですか。あれ以降もいっぱいありますけど、あれに勝るものがないからラストになってるんですけど。豊田くんがそういう演奏できたのもたまたまだと思うよ。豊田くんのライブも日によって色々あるし、で、たまたまそこにぼくがいれたことがラッキーだったなって話で。お互い、豊田くんがベスト、ぼくがベストっていう状況はそんなに、一年間を通じてないので、それがたまたま高円寺のペンギンハウスだった(笑)」

ーお客さんから見ていると、松尾さんが横で撮影していると特別なライブな感じがしちゃうんですよ

「プレッシャーかな。俺がいないとよく喋るらしいけど(笑)」

ー今回、普段は劇場でやる機会はあまりないと思うんですけど、劇場でやる意気込みはありますか

「大きなスクリーンで見て、聴いてみたいなってのが一番にあるね。あと、案外映像集って、AVもそうだけど、DVD化してるものってのはお客さんの生の反応がないので、後々レビューを書いてもらったりで確認はするんですけど、生の反応を聴く機会がないので、それを見てみたい。それをAVでやっても、やっぱりむずむずしたものが残る感じで。今回は気持ちが良いので、それは楽しみにしています。上映の機会を与えてくれたことが嬉しいです。それとやっぱり、豊田くんの音楽をたくさんの人に聴いてもらいたいってのが一番だから。それに関して言えばいい機会だと思います」

インタビュー・構成:岩淵弘樹

posted by MOOSIC LAB at 17:23| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。